写真・谷岡義雄
 
写真・澤田耕治


村上康成(むらかみ やすなり)

1955年岐阜県生まれ。

 創作絵本をはじめ、イラストレーション・エッセイ・タブロー、オリジナルグッズ等、独自の世界を幅広く展開し、年齢を超えて多くの人々に親しまれている。
 こと魚釣りへの情熱は、自他共に認める「みずぎわ族」たる所以であり、なによりその生き物たちの息づく自然に身をおくことをこよなく愛する自然派アーティストである。

 絵本の持つ魅力、絵本表現の可能性を、でデビュー作「ピンク、ぺっこん」(徳間書店)以来、フレキシブルに探し続けている。伊豆高原には村上康成美術館、石垣島には村上康成絵本ギャラリーがある。


【受賞作品】

「ピンクとスノーじいさん」(徳間書店) 1986年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞

「プレゼント」(文・長谷川集平・BL出版) 1988年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞

「ようこそ森へ」(徳間書店) 1989年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞

「ピンク!パール!」(徳間書店) 1991年ブラチスラバ世界絵本原画ビエンナーレで金牌受賞

「森へようこそ」カレンダー 1997年第48回全国カレンダー展特別部門賞受賞

「なつのいけ」(文・塩野米松・ひかりのくに) 2003年第8回日本絵本大賞受賞

「オタマジャクシのうんどうかい」(文・阿部夏丸・講談社) 2003年第14回ひろすけ童話賞

「石のきもち」(ひさかたチャイルド) 2012年第3回ようちえん絵本大賞

「999ひきのきょうだいのおひっこし」(文・木村研・ひさかたチャイルド)2012年ドイツ児童文学絵本大賞ノミネート

「おおきくなるっていうことは」(文・中川ひろたか・童心社) 2013年第4回ようちえん絵本大賞


 「絵本と30年。そして、子どもたちへ」

 小さい時から外でよく遊んだ。川、湖、山、どこも自分にとっては、ドキドキの楽しみの宝庫だった。魚、昆虫、植物・・・。もちろんプラモデルを作ったり、アトムや鉄人28号を描いたり、でもなぜかゴッホが好きだった。小学校の廊下に「オーヴェールの聖堂」の複製画が飾ってあり、時々、その絵の前に佇んでいた。
 中学、高校と野球部だった。軟式だけど、高校ではキャッチャー・キャプテンで、県大会決勝戦まで進んだものの、ぼくの暴投で、さよなら負け。翌日美術部に入り、デッサンをかじり始めた。翌翌年、入学できた愛知県立芸術大学では、デザインを専攻。でも、浪人時代に出会った、初めての絵本、「のらいぬ」(至光社)に衝撃を受け、絵本表現へ傾倒していった。
 ただ、一番情熱を注いでしまったのは、ヨット。二人乗りのディンギータイプ。このレースに興じていた。3年間みっちり、学業ではなく、風と波と潮が体にしみこんでいった。でも、卒業するまでこんなことしていてよいのだろうか、そんな気配も漂っていたのも事実。浪人時代を共に過ごした長谷川集平が武蔵野美術大学2年の時、「はせがわくんきらいや」ですばる書房の新人賞を受賞、出版していた。悩んだ。そして、やはり自分を追い込もうと中退を決め、出版社の多い東京へ出た。アルバイトのほか、すばる書房・嘱託にて「月刊絵本」の編集、デザイン事務所を経て、フリーへ。
  ただ、上京してからも、仲間を募ってヨットを買ったりもした。それと、もうひとつの本来の自分の毛穴が騒ぐ、渓流釣りへと、時間を作っては奥多摩や信州に出かけていた。小学3年の時、故郷の岐阜の川で知ったヤマメ(アマゴ)の美しさは記憶の中でも色あせることなく、出会うごとに、ヤマメに魅了されてきた.
 このことが結果的に絵本の出版につながった。「ピンク、ぺっこん」(当時・福武書店、現・徳間書店)が生まれた。悶々と絵本表現に憧れるだけで、ようやく、ヤマメがきっかけをくれたのだった。もちろん、それを薦めてくれた編集者の洞察あってのことだが。当時ちょうど発刊されたアウトドア雑誌「BE‐PAL」(小学館)でのイラストの仕事とツインカムで、自分の興味の対象とマッチングして仕事することができた。いや、したくない仕事はしなかったのだけれど。あれよあれよと、30年。ブリージングのブランドを立ち上げ、たくさんのメーカーの協力のもと、こだわりのグッズも作り続けている。
 ほんと、素直に子どもに願うこと、それは、絶対やらなければならないことがある。体を使って徹底的に自然の中で遊ぶこと。たとえば、手の中に一匹のカエルがいる。命がある。キミの手は感じている。たとえばそこに、サルビアの花が咲いている。つんと抜いて、舐めてみる。チョウやミツバチはちゃんと知っている。キミの鼻や舌は甘いって喜ぶ。朝の冷気、太陽の熱さ、夕立の匂い、夜の闇の色、・・・。いろんなことを感じたり、考えたりすることって、キミの全身なんだ、ということ。頭のてっぺんから足の爪先まで、キミなんだ、ということ。全身の毛穴を開いて、遊ぼう。センサーを磨こう。自然の命をたくさん、たくさん、引継ぎ、どんどん、どんどん、キミはすごい生き物になっていくよ。
 日本にはすばらしい季節という環境がある。世界には想像を越えた大自然がある。とことん、この奇跡の星を体で慈しんでほしい。



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